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久しぶりに2人で登山し、大菩薩嶺の神部岩で説明を聞きながら、山の眺望を楽しむ皇太子ご夫妻(当時)=2002年9月、山梨県塩山市(現・甲州市)

9月21日(2017年) 皇太子さま(当時)が天狗岳登山 編集委員・島康彦

 2017年のこの日、皇太子時代の天皇陛下が長野県の北八ケ岳・天狗岳(2646メートル)に登頂した。陛下は登山が趣味で、5歳の初登山以降、のぼった山は170を超える。天狗岳は即位前最後の山登りとなった。

 天狗岳登山は09年、13年にも計画されたが、天候不良で中止されていた。陛下は前日に山に入り、山小屋に宿泊。この日は早朝から登山を楽しんだ。頂上で報道陣の取材に応じ、「素晴らしい条件のもとで登ることができたことを大変うれしく思っています」と笑顔で語った。

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ガイドとともに、天狗岳の山頂に到着した皇太子さま(当時)=2017年9月、長野県茅野市

 陛下の初登山は、5歳の時に登った長野・軽井沢の離山(はなれやま)だ。雑誌「山と渓谷」の1996年1月号に「山と私」と題したエッセーを寄稿。父親である上皇さま(当時は皇太子)との登山の思い出に触れ、「図鑑を片手に、植物を見つけては立ち止まる父のペースをいささかじれったく思ったこともあった」とのエピソードを披露した。

 「自分をゆっくりと大自然のなかにおき、動植物や地質を観察し、自然の恩恵に浴すこと、そして、個々の山の歴史に思いを致し、登山の行程全体を楽しむ」。登山の楽しみについても率直な思いを明かしていた。

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清掃登山に来ていた地元の那須町立那須中学校の生徒たちに近づき、笑顔で声をかける皇太子さま(当時)=2001年8月、栃木県那須町

 記者の私は、何度か陛下の登山に同行した。普段の公務では、対面する相手に気を配り、どこか控えめな印象がある。それに比べ山中では、リラックスした表情で、その笑顔から、心から楽しんでいる様子がうかがえた。

 陛下の登山取材では、報道陣は先に山を登り、取材ポイントで待ち構えた。陛下の山を歩くスピードは熟練した登山者のレベルで、とてもついて行くことができず、取材ポイントに先回りする必要があるためだ。若手記者でも頻繁に休憩を取るような険しい山でも、汗もあまりかかず、涼しげな陛下の様子に驚いたのを思い出す。

 結婚に注目が集まっていたこ…

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